KKS KanajoJ: Difference between revisions

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:Unvoiced by Takeoka with no comment, other sources voice.
:Unvoiced by Takeoka with no comment, other sources voice.


= [[KKS Kanajo 6|6 - The Man'yoshu era]] =
= [[KKS Kanajo 6|6 - The ''Man'yōshū'' era]] =


いにしへよりかくつたはるうちにも、ならの御時よりぞひろまりにける、かのおほん世や歌の心をしろしめしたりけん、かのおほむときにおほきみつのくらゐかきのもとの人丸なん、うたのひじりなりける、これは君もひとも身をあはせたりといふなるべし、秋のゆふべ龍田河にながるゝもみぢをばみかどのおほんめに錦と見たまひ、春のあしたよし野の山のさくらは人まろが<ruby>心<rt>目ィ</rt></ruby>には雲かとのみなんおぼえける、又山のへのあか人といふ人ありけり、うたにあやしくたへなりけり、人まろは赤人がかみにたゝんことかたく、あか人は人まろがしもにたゝんことかたくなんありける、
いにしへよりかくつたはるうちにも、ならの御時よりぞひろまりにける、かのおほん世や歌の心をしろしめしたりけん、かのおほむときにおほきみつのくらゐかきのもとの人丸なん、うたのひじりなりける、これは君もひとも身をあはせたりといふなるべし、秋のゆふべ龍田河にながるゝもみぢをばみかどのおほんめに錦と見たまひ、春のあしたよし野の山のさくらは人まろが<ruby>心<rt>目ィ</rt></ruby>には雲かとのみなんおぼえける、又山のへのあか人といふ人ありけり、うたにあやしくたへなりけり、人まろは赤人がかみにたゝんことかたく、あか人は人まろがしもにたゝんことかたくなんありける、
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* 心(目ィ)- The reading 人まろが目 is found in 元・経・清 among others.
* 心(目ィ)- The reading 人まろが目 is found in 元・経・清 among others.


= 7 =
= [[KKS Kanajo 7|7 - The six sages of poetry]] =


こゝにいにしへのことをも歌の心をもしれる人わづかにひとりふたりなりき、しかあれどこれかれえたるところえぬ所たがひになんある、かの御時よりこのかた年はもゝとせあまり世はとつぎになんなりにける、いにしへの事をもうたをもしれる人よむ人おほからず、今このことをいふに、つかさくらゐたかき人をばたやすきやうなればいれず、
こゝにいにしへのことをも歌の心をもしれる人わづかにひとりふたりなりき、しかあれどこれかれえたるところえぬ所たがひになんある、かの御時よりこのかた年はもゝとせあまり世はとつぎになんなりにける、いにしへの事をもうたをもしれる人よむ人おほからず、今このことをいふに、つかさくらゐたかき人をばたやすきやうなればいれず、
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:Takeoka reads あきびと from the 名義抄.
:Takeoka reads あきびと from the 名義抄.


= 8 =
;御国忌
:Takeoka reads おほむこっき based on other KKS manuscripts, with the おほむ following from the kana written examples in the kanajo.


= 9 =
;やま人
:Takeoka reads やまびと from MYS evidence.
 
= [[KKS Kanajo 8|8 - The compilation of the ''Kokinshū'']] =
 
かゝるにいますべらきのあめのしたしろしめす事よつのときこゝのかへりになんなりぬる、あまねきおほんうつくしみのなみやしまのほかまでながれ、ひろきおほんめぐみのかげつくは山の麓よりもしげくおはしまして、万のまつりごとをきこしめすいとまもろ/\のことをすて給はぬ余りに、古の事をも忘れじふりにしことをもおこし給ふとて、今もみそなはし後の世にもつたはれとて、延喜五年四月十八日に大内記きのとものり、御書のところのあづかりきの貫之、さきのかひのさう官おふしかうちのみつね、右衛門の府生みぶのたゞみねらにおほせられて、万えふしふにいらぬふるきうたみづからのをもたてまつらしめ給ひてなん、それがなかにもむめをかざすよりはじめてほとゝぎすをきゝもみぢをおり雪をみるにいたるまで、又つるかめにつけて君をおもひ人をもいはひ秋はぎ夏草をみてつまをこひあふさか山にいたりてたむけをいのり、あるは春夏秋冬にもいらぬくさ/\の歌をなんえらばせたまひける、すべて千うたはたまきなづけて古今わかしふといふ、
 
* おふしかうちのみつね] おほしかふちのみつね(新編国歌大観)、おふしかふちのみつね(新大系). Takeoka and Katagiri both read the same as the base text given here. 日本国語大辞典 provides the reading おほしかふち for the name.
* それがなかにも] それがなかに(諸本), although 元 reads the same as the base text.
 
清濁・漢字の読み
 
;すべらき
:Takeoka reads as すべらぎ mbased on the 名義抄, but he mentions that other sources have すべらぎ. Katagiri reads as すべらぎ, as does 新大系.
 
;大内記
:Takeoka reads as だいないき from the 声点本.
 
;さう官
:Everyone agrees that 官 is read くわん. For the first part, the Manajo reads 少目, so Katagiri replaces 官 kanji, reading 少目 as さうくわん. 新大系 and 和歌大系 read 少目 as さう and preserve the 官.
 
;府生
:Katagiri and Takeoka read as ふしゃう (Takeoka quotes a medieval commentary). 新大系 reads ふさう. Dictionaries seem to generally go with ふしゃう as the headword and then note that it is also read ふせい or ふさう.
 
;みぶ
:Takeoka notes that there is inconsistent evidence on the voicing; he does not voice but Katagiri and 新大系 do.
 
;えらばせ
:Takeoka does not voice based on the 上代別 dictionary, noting that the commentaries and 声点本 are inconsistent. Other editions voice.
 
= [[KKS Kanajo 9|9 - Conclusion]] =
 
かくこのたびあつめえらばれて山した水のたえず浜の真砂のかずおほくつもりぬれば、いまはあすかゞはのせになるうらみもきこえずさゞれ石のいはほとなるよろこびのみぞあるべき、
 
それ枕言葉は春の花にほひすくなくしてむなしき名のみ秋のよのながきをかこてれば、かつは人のみゝにおそりかつは歌の心にはぢ思へど、たなびく雲のたちゐなくしかのおきふしは、つらゆきらがこの世におなじくむまれてこの事の時にあへるをなんよろこびぬる、人まろなくなりにたれど歌のこととゞまれるかな、たとひ時うつり事さりたのしみかなしびゆきかふともこのうたのもじあるをや、あをやぎの糸たえず松のはの散うせずしてまさきのかづらながくつたはりとりの跡ひさしくとゞまれらば、歌のさまをもしりことの心をえたらん人はおほぞらの月をみるがごとくにいにしへをあふぎていまをこひざらめかも
 
* 枕言葉は] まくらことは(新編国歌大観)- The Teika texts read this way, many other texts read まくらことはに instead.
* たのしみ] たのしび(諸本)
 
清濁・漢字の読み
 
;枕言葉
:The meaning of this phrase is disputed, resulting in several different readings and punctuation; see the main notes for more details.

Latest revision as of 15:11, 29 May 2026

The variant text information for the Kana Preface only includes places where the base text differs from the standard texts used in modern editions.

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200016834/1?ln=ja

やまとうたは、人の心をたねとして、よろづのことの葉とぞなれりける、世中にある人ことわざしげきものなれば、心に思ふ事を見るものきく物につけていひいだせるなり、花になくうぐひす水にすむかはづの声をきけば、いきとしいけるものいづれか歌をよまざりける、ちからをもいれずしてあめつちをうごかし、めに見えぬおに神をもあはれとおもはせ、おとこ女のなかをもやはらげ、たけきものゝふの心をもなぐさむるは歌なり

清濁:

おに神
Most editions either do not provide a reading for 神, or they voice as おにがみ. Dictionaries also generally include the word as おにがみ. However, Takeoka indicates that there is no evidence for this reading -- just as あめつち is a compound "heaven and earth" and thus does not take rendaku, it seems that おに神 should be "demons and gods" and thus read unvoiced as おにかみ.

此歌あめつちのひらけはじまりけるときよりいできにけり、

(あまのうきはしのしたにてめ神を神となりたまへることをいへるうたなり)

しかあれども、世につたはることは、ひさかたのあめにしては、したてるひめにはじまり、

(したてるひめとはあめのわかみこのめ也、せうとの神のかたちをかたにゝうつりて、かゝやくをよめるえびすうた成べし、これらはもじのかずもさだまらず、歌のやうにもあらぬことゞも也)

あらかねのつちにしては、すさのをのみことよりぞおこりける、ちはやぶる神代にはうたのもじもさだまらず、すなほにしてことのこゝるわきがたかりけらし、人の世となりて、すさのをのみことよりぞみそもじあまりひともじはよみける、

(すさのをのみことはあまてるおほん神のこのかみなり、女とすみたまはんとていづもの国に宮づくりしたまふ時にその所にやいろの雲のたつを見てよみ給へるなり、やくもたついづもやへがきつまごめにやへがきつくるそのやへがきを、)

清濁:

したてるひめ
The 新編国歌大観 voices as したでるひめ. The 大辞泉 indicates both readings are possible but most editions do not voice, and other dictionaries do not voice either.
かかやく
The 時代別国語大辞典 points out that most sources prior to the Edo period do not voice the word as かがやく, although there are some cognate words that do have voicing. Takeoka and Katagiri do not voice.
あらかねの
This is unvoiced as late as the 日葡辞書. Takeoka and Katagiri do not voice.
ちはやぶる
The available evidence suggests this word was originally voiced, and the unvoiced ちはやふる is a later development (possibly resulting from misreading of manuscripts or editions that did not mark voicing)
宮づくり
Takeoka voices based on old commentaries. Katagiri does not voice. 新大系 voices.

かくてぞ花をめで、とりをうらやみ、かすみをあはれび、つゆをかなしぶ、心こと葉おほくさま/\になりにける、とをき所もいでたつあしもとよりはじまりて、年月をわたりたかき山もふもとのちりひぢよりなりて、あま雲たなびくまでおひのぼれるごとくに、このうたもかくのごとくなるべし、なにはづの歌はみかどのおほんはじめなり、

(おほさゞきのみかどのなにはづにてみこときこえける時、東宮をたがひにゆづりてくらゐにつきたまはで三年になりにければ、王仁といふ人のいぶかり思ひてよみてたてまつりける歌也、この花は梅の花をいふなるべし、)

あさか山のことばゝうねめのたはぶれよりよみて、

(かづらきのおほきみをみちのおくへつかはしたりける時に、くにのつかさことおろそかなりとて、まうけなどしたりけれど、すさまじかりければ、うねめなりける女のかわらけとりてよめるなり、これにぞおほきみの心とけにける、)

このふた歌はうたの父母のやうにてぞてならふ人のはじめにもしける

  • つかはしける時に] つかはしけるに(諸本)

清濁・漢字の読み

あま雲
Takeoka and Katagiri do not voice. 新大系 voices. Takeoka cites the 時代別 that old man'yogana spellings are always unvoiced, although Takeoka notes that later manuscripts/editions of KKS voice.
おほさゞき
Takeoka and Katagiri both voice this way based on the Kojiki spelling, although Takeoka notes that later sources spell the bird name as ささぎ instead, which is perhaps why a number of old and modern KKS sources spell the Emperor's name here as おほささぎ instead.
王仁
Takeoka reads as わうに based on manuscripts of the KKS that write the name in kana. Katagiri uses わに instead, apparently taking the reading from the Kojiki. 新大系 and 和歌大系 also use わに.
いぶかり
Takeoka and Katagiri both voice based on the 名義抄, although they note that in the MYS it is read unvoiced instead.
たはぶれ
The 新撰字鏡 voices; the word comes from an older たはむれ.
かづらきのおほきみ
Takeoka and Katagiri both voice; Takeoka cites the 声点本 in support.
すさまじかり
Takeoka and Katagiri both voice, and both cite the 名義抄 and the 字類抄.

そも\/、歌のさまむつなり、からのうたにもかくぞあるべき、そのむくさのひとつにはそへうた、おほさゞきの御門をそへたてまつれるうた、

なにはづにさくやこの花冬こもり今は春べとさくやこの花

といへるなるべし、ふたつにはかぞへうた、

さく花に思ひつく身のあぢきなさ身にいたつきのいるもしらずて

といへるなるべし、

(これはたゞことにいひて、ものにたとへなどもせぬものなり、このうたいかにいへるにかあらん、その心えがたし、いつゝにたゞこと歌といへるなんこれにはかなふべき、)

みつにはなずらへうた、

君にけさあしたの霜のおきていなば恋しきごとにきえやわたらん

といへるなるべし、

(これは物にもなずらへて、それがやうになんあるとやうにいふなり、このうたよくかなへりとも見えず、たらちめのおやのかふこのまゆごもりいぶせくもあるかいもにあはずて、かやうなるやこれはかなふべからん、)

よつにはたとへうた、

我恋はよむともつきじありそ海の浜のまさごはよみつくすとも

といへるなるべし、

(これはよろづの草木鳥けだ物につけて心をみするなり、この歌はかくれたる所なんなき、されどはじめのそへ歌とおなじやうなればすこしさまをかへたるなるべし、すまのあまのしほやく煙風をいたみ思はぬかたにたなびきにけり、此歌などやかなふべからん、)

いつゝにはたゞことうた、

いつはりのなき世なりせばいかばかり人の言のは嬉しからまし

といへるなるべし、

(これはことのとゝのほりたゞしきをいふなり、この歌の心さらにかなはず、とめ歌とやいふべからん、山桜あくまで色をみつる哉花ちるべくも風ふかぬよに、)

むつにはいはひうた、

このとのはむべもとみけりさきくさのみつばよつ葉にとのづくりせり

といへるなるべし、

(これは世をほめて神につぐるなり、この歌いはひうたとは見えずなんある、春日野にわかなつみつゝよろづよをいはふ心は神ぞしるらん、これらやすこしかなふべからん、おほよそむくさにわかれんことはえあるまじき事になん)

清濁・漢字の読み

冬こもり
Katagiri and Takeoka do not voice; 新大系 voices. Takeoka explains (based on 時代別) that this is an older use of the word that should be unvoiced because of the age of this poem -- other Heian uses in the collection should be ふゆごもり instead.
春べ
Voiced by Takeoka from MYS precedent. Unvoiced by Katagiri. 新大系 voices.
いたつき
Takeoka voices (possibly from 日葡辞書, or because it is supposed to conceal 鶴(たづ), but no explanation is given). Katagiri and 新大系 do not voice.
たちらめ...
The voicing of the words in this poem follows Katagiri and Takeoka, and is also the same as the 新全集 edition of the MYS.
煙
The reading けぶり comes from manuscripts that write the word in kana.

今の世中、いろにつき人の心花になりにけるよりあだなるうたはかなきことのみいでくれば、色ごのみのいへにむもれ木の人しれぬことゝなりて、まめなるところには花すゝきほにいだすべき事にもあらずなりにたり、

そのはじめを思へばかゝるべくなんあらぬ、いにしへのよゝのみかど春の花のあした秋の月の夜ごとにさぶらふ人々をめして、ことにつけつゝうたをたてまつらしめたまふ、あるは花をそふとて、たよりなき所にまどひ、あるは月をおもふとてしるべなきやみにたどれる心々をみたまひて、さかしをろかなりとしろしめしけん、

しかあるのみにあらず、さゞれ石にたとへつくば山にかけて君をねがひ、よろこび身にすぎたのしみ心にあまり、ふじの煙によそへて人をこひ、松虫のねに友をしのび、高砂住の江の松もあひをひのやうにおぼえ、男山のむかしを思ひ出て、をみなへしの一時をくねるにもうたをいひてぞなぐさめける、

又春のあしたに花のちるを見、秋の夕ぐれにこのはの落るをきゝ、あるはとしごとにかゞみのかげに見ゆる雪と浪とをなげき草の露、水のあはを見て、わが身をおどろき、あるはきのふはさかへをごりて時をうしなひ世にわびしたしかりしもうとくなり、あるは松山の浪をかけ野なかの水をくみ秋はぎのしたばをながめあかつきのしぎのはねがきをかぞへ、あるはくれたけのうきふしを人にいひよしのかはをひきて世中をうらみきつるに、今はふじの山も煙たゝずなりながらのはしもつくるなりときく人は歌にのみぞ心をなぐさめける

  • たのしみ] たのしび(諸本)

清濁・漢字の読み

むもれ木
Voiced as むもれぎ by Takeoka on evidence of the 声点本, no reading given by Katagiri or 新大系.
つくは山
Unvoiced by Takeoka and Katagiri. Takeoka bases this on 上代 use as well as the 声点本. 新大系 and 新編国歌大観 voice.
はねがき
Unvoiced by Takeoka with no comment, other sources voice.

いにしへよりかくつたはるうちにも、ならの御時よりぞひろまりにける、かのおほん世や歌の心をしろしめしたりけん、かのおほむときにおほきみつのくらゐかきのもとの人丸なん、うたのひじりなりける、これは君もひとも身をあはせたりといふなるべし、秋のゆふべ龍田河にながるゝもみぢをばみかどのおほんめに錦と見たまひ、春のあしたよし野の山のさくらは人まろが心目ィには雲かとのみなんおぼえける、又山のへのあか人といふ人ありけり、うたにあやしくたへなりけり、人まろは赤人がかみにたゝんことかたく、あか人は人まろがしもにたゝんことかたくなんありける、

(ならのみかどの御うた、龍田川紅葉みだれてながるめりわたらば錦なかやたえなん、人まろ、梅花それともみえずひさかたのあまぎる雪のなべてふれゝば、ほの/\とあかしのうらのあさぎりにしまがくれ行舟をしぞ思ふ、赤人、春のゝにすみれつみにとこしわれぞ野をなつかしみひと夜ねにける、わかの浦にしほみちくればかたをなみあしべをさしてたづなきわたる)

この人々をゝきて又すぐれたる人もくれ竹の世々にきこえかたいとのよりよりにたえずぞありける、これよりさきの歌をあつめてなん万えふしふとなづけられたりける、

  • 心(目ィ)- The reading 人まろが目 is found in 元・経・清 among others.

こゝにいにしへのことをも歌の心をもしれる人わづかにひとりふたりなりき、しかあれどこれかれえたるところえぬ所たがひになんある、かの御時よりこのかた年はもゝとせあまり世はとつぎになんなりにける、いにしへの事をもうたをもしれる人よむ人おほからず、今このことをいふに、つかさくらゐたかき人をばたやすきやうなればいれず、

其外にちかき世にその名きこえたる人は、すなはち僧正遍昭はうたのさまはえたれどもまことすくなし、たとへばゑにかけるをうなを見ていたづらに心をうごかすがごとし

(「あさみどりいとよりかけて白露を玉にもぬける春の柳か」、「はちすばのにごりにしまぬ心もてなにかは露を玉とあざむく」、さが野にて馬よりおちてよめる、「名にめでゝおれるばかりぞをみなへし我おちにきと人にかたるな」)

ありはらのなりひらはそのこゝろあまりてこと葉たらず、しぼめる花の色なくてにほひのこれるがごとし

(「月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」、「おほかたは月をもめでじこれぞこのつもれば人のおいとなるもの」、「ねぬる夜の夢をはかなみまどろめばいやはかなにもなりまさるかな」〉

ふんやのやすひではことばはたくみにてそのさま身におはず、いはゞあき人のよききぬきたらんがごとし

(「吹からにのべの草木のしほるればむべ山風をあらしといふらん」、深草のみかどの御国忌に、「草ふかきかすみの谷にかげかくしてる日のくれしけふにやはあらぬ」)

宇治山の僧きせんはこと葉かすかにしてはじめをはりたしかならず、いはゞ秋の月を見るにあかつきの雲にあへるがごとし

(「わがいほはみやこのたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり」

よめるうたおほくきこえねばかれこれをかよはしてよくしらず、

をのゝ小町はいにしへのそとをりひめの流なり、あはれなるやうにてつよからず、いはゞよきをうなのなやめる所あるににたり、つよからぬはをうなのうたなればなるべし

(「思ひつゝぬればや人の見えつらん夢としりせばさめざらましを」、「色見えでうつろふ物は世中の人のこゝろの花にぞありける」、「わびぬれば身をうき草のねをたえてさそふ水あらばいなんとぞ思ふ」、そとをりひめの歌、「わがせこがくべきよひなりさゝがにのくものふるまひかねてしるしも」)

大伴のくろぬしはそのさまいやし、いはゞたきゞおへるやま人の花のかげにやすめるがごとし

(「おもひ出て恋しき時ははつかりのなきてわたると人はしらずや」、「かゞみ山いざたちよりてみてゆかん年へぬる身はおいやしぬると(らんィ)」)

このほかの人/\その名きこゆる、のべにおふるかづらのはひひろごりはやしにしげき木の葉のごとくにおほかれど、うたとのみ思ひてそのさましらぬなるべし

清濁・漢字の読み

あき人
Takeoka reads あきびと from the 名義抄.
御国忌
Takeoka reads おほむこっき based on other KKS manuscripts, with the おほむ following from the kana written examples in the kanajo.
やま人
Takeoka reads やまびと from MYS evidence.

かゝるにいますべらきのあめのしたしろしめす事よつのときこゝのかへりになんなりぬる、あまねきおほんうつくしみのなみやしまのほかまでながれ、ひろきおほんめぐみのかげつくは山の麓よりもしげくおはしまして、万のまつりごとをきこしめすいとまもろ/\のことをすて給はぬ余りに、古の事をも忘れじふりにしことをもおこし給ふとて、今もみそなはし後の世にもつたはれとて、延喜五年四月十八日に大内記きのとものり、御書のところのあづかりきの貫之、さきのかひのさう官おふしかうちのみつね、右衛門の府生みぶのたゞみねらにおほせられて、万えふしふにいらぬふるきうたみづからのをもたてまつらしめ給ひてなん、それがなかにもむめをかざすよりはじめてほとゝぎすをきゝもみぢをおり雪をみるにいたるまで、又つるかめにつけて君をおもひ人をもいはひ秋はぎ夏草をみてつまをこひあふさか山にいたりてたむけをいのり、あるは春夏秋冬にもいらぬくさ/\の歌をなんえらばせたまひける、すべて千うたはたまきなづけて古今わかしふといふ、

  • おふしかうちのみつね] おほしかふちのみつね(新編国歌大観)、おふしかふちのみつね(新大系). Takeoka and Katagiri both read the same as the base text given here. 日本国語大辞典 provides the reading おほしかふち for the name.
  • それがなかにも] それがなかに(諸本), although 元 reads the same as the base text.

清濁・漢字の読み

すべらき
Takeoka reads as すべらぎ mbased on the 名義抄, but he mentions that other sources have すべらぎ. Katagiri reads as すべらぎ, as does 新大系.
大内記
Takeoka reads as だいないき from the 声点本.
さう官
Everyone agrees that 官 is read くわん. For the first part, the Manajo reads 少目, so Katagiri replaces 官 kanji, reading 少目 as さうくわん. 新大系 and 和歌大系 read 少目 as さう and preserve the 官.
府生
Katagiri and Takeoka read as ふしゃう (Takeoka quotes a medieval commentary). 新大系 reads ふさう. Dictionaries seem to generally go with ふしゃう as the headword and then note that it is also read ふせい or ふさう.
みぶ
Takeoka notes that there is inconsistent evidence on the voicing; he does not voice but Katagiri and 新大系 do.
えらばせ
Takeoka does not voice based on the 上代別 dictionary, noting that the commentaries and 声点本 are inconsistent. Other editions voice.

かくこのたびあつめえらばれて山した水のたえず浜の真砂のかずおほくつもりぬれば、いまはあすかゞはのせになるうらみもきこえずさゞれ石のいはほとなるよろこびのみぞあるべき、

それ枕言葉は春の花にほひすくなくしてむなしき名のみ秋のよのながきをかこてれば、かつは人のみゝにおそりかつは歌の心にはぢ思へど、たなびく雲のたちゐなくしかのおきふしは、つらゆきらがこの世におなじくむまれてこの事の時にあへるをなんよろこびぬる、人まろなくなりにたれど歌のこととゞまれるかな、たとひ時うつり事さりたのしみかなしびゆきかふともこのうたのもじあるをや、あをやぎの糸たえず松のはの散うせずしてまさきのかづらながくつたはりとりの跡ひさしくとゞまれらば、歌のさまをもしりことの心をえたらん人はおほぞらの月をみるがごとくにいにしへをあふぎていまをこひざらめかも

  • 枕言葉は] まくらことは(新編国歌大観)- The Teika texts read this way, many other texts read まくらことはに instead.
  • たのしみ] たのしび(諸本)

清濁・漢字の読み

枕言葉
The meaning of this phrase is disputed, resulting in several different readings and punctuation; see the main notes for more details.